街のインフォメーション

宮本典刀 -街の記憶-2025年4月12日(土)~6月1日(日)

  • エリア その他
  • ジャンル 展覧会
どこかにある、どこでもない、街の風景-。

銅版画家・宮本典刀は、いわく「心のなかに沈んでいる記憶」を丁寧に拾いあげ、それらを再構築して、街の風景を描いています。

宮本は、旅先で、あるいは日常生活の延長で、大通りから人目につかない裏路地にいたるまで、長い時間をかけて、街を歩きまわります。その間、スケッチブックをひろげて写生をしたり、メモを取ったりすることはありません。彼はひたすら歩きつづけ、光や色、肌に触れる空気、におい、音など、街をかたちづくっている要素を、そのままに、心身に受けとめてゆきます。そして、宮本のうちに集積した街のさまざまな「記憶」は、切妻屋根の家々、煙突や橋といった、人間の暮らしを暗示する構造物のかたちをとって、描きだされます。

宮本の画面は、微細かつ均質な粒子によってあらわされたアクアチントの色面を、彼のきわめて精密な技術をもって構成することで成立しています。いわゆる写実からは遠いところにあるフラットな表現は、私たちを個の特定から解き放ちます。どこでもない風景のなかで、私たちは自らの心奥に眠る「記憶」との邂逅をはたし、私たちを私たちたらしめているものと、向き合うことになるのです。

また、音楽との関係性も特筆すべき点です。宮本は日ごろから多彩な音楽に触れ、とりわけスペインやポルトガルの民族音楽、またF.モンポウやR.シュトラウスなどの楽曲を愛聴し、ときに音楽から着想した画題も生まれます。とはいえ彼は、音楽との結びつきを殊更に意識しているわけではありません。「色をみると音が聴こえる」「音がみえる」とは宮本のことばですが、たとえば絵画作品などを鑑賞する際にも、そこにおのずと音を感じとるといいます。

あらゆる情報が瞬時に過ぎ去ってゆくばかりのいま、私たちが見失ってきた「記憶」はどれほどあるでしょうか。宮本の作品をとおし、それらとふたたび出あうことができるかもしれません。

《蜃気楼》 2012年

展示内容、見どころ

銅版画制作50年以上となる宮本典刀氏。最初期にはエングレーヴィリングやリフトグランド・エッチングなどによる細密な線描・点描表現に取り組んでいましたが、1990年代末以降は、アクアチントによる色面が作画の主体となります。宮本氏のアクアチントは粒子が非常に細かく、かつ均質にあらわされており、また色面の見当あわせに正確さにも驚かされます。美術館では初めての個展となる本展では、1999年以降のアクアチント作品を中心に、最初期作から最新作までを含む約70点を展観し、宮本氏の仕事をたどります。

《青の街角》 2017年

《机上の記憶(2)》 2003年

《赤い橋》 2008年

Photos: Yohei Yamakami

関連イベント

①アーティストによるギャラリートーク
担当学芸員の進行で、宮本典刀氏にお話をうかがいながら作品を鑑賞します。
●日時:4月26日(土)14:00~(40分程度)
●会場:吉祥寺美術館 企画展示室
◎定員15名程度(予約不要、先着順、要入館)

②鈴木大介ギター・コンサート
国際的に活躍するギタリスト・鈴木大介氏の珠玉の演奏を、本展のためのプログラムでお楽しみいただきます。
●日時:5月24日(土)15:00~16:00
●会場:吉祥寺美術館 音楽室
●定員:50名
●事前予約制(先着順、要入館)
●4月19日(土)10:00より電話0422-22-0385にて受付
(定員に達し次第終了、キャンセル待ちなし)

③特別展示 宮本典刀 -路地裏-
●会期:5月2日(金)~5月8日(木)
●時間:13:00~18:00 
*初日14:00から、最終日16:00まで
●会場:PENNY LANE GALLERY
(コピス吉祥寺A館1F、吉祥寺美術館と同じ建物内)
●入場無料 会期中無休

入館料

一般300円、中高生100円(小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
名称 宮本典刀 -街の記憶-
イベント日程 4月12日(土)~6月1日(日)
10:00~19:30
【休館日】4/30(水)、5/28(水)
イベント会場名称 武蔵野市立吉祥寺美術館
所在地 武蔵野市吉祥寺本町1-8-16
コピス吉祥寺A館7階
交通アクセス
※美術館専用の駐車場はありません。