インタビュー

剣道八段剣道具店 南武堂 波多野登志夫さん

立川駅南口から諏訪通り商店街に向かう道。剣道具店 南武堂は波多野さんのお店です。

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駿河台大学剣道部師範の波多野さん。
週に2回は稽古にも顔をだし、
学生を指導します。
剣道八段。
この道の達人は、強くてやさしい、
そしてとってもおしゃれな方でした。

波多野登志夫さんは武蔵村山にお住まいです。ご自宅にうかがって剣道との出会いなどをお聞きしました。

剣道との出会い

おやじが警察官だったからね、兄弟もみんな剣道をやりました。
私は昭和20年生まれですが、戦後武道教育が禁止されていて剣道をやることができなかった。
剣道が再開されたのは昭和27年で、私は小学校2年、8歳から剣道を始めました。

八段には49歳で合格しました。段取得にはいろいろな規制があって、当時私は七段に合格してから受験するまでに15年待たなければならなかった。
でもね、この15年にいろいろな心の向上があるんですよ。
今は七段合格から10年待てばよくて、46歳から受けられるようになりました。

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駿河台大学剣道部

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歴史のある有名大学には、全国から剣道でも何でも強い選手が集まってきます。
駿河台大学は歴史がまだ浅い。
私が師範としてこちらの大学に来た当時は、強い選手をとるというより、
入部してきた学生を剣道部で育てるという感じでした。
やがて、育てて行くうちに全国大会に出場できるようになり、
10年前からは全国の高校から強い選手を募ることができるようになったのです。
和歌山や群馬、鹿児島からなんかも来ていますよ。

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「剣は手に従い、手は心に従う。心は法に従い、法は天に従う」

これは神道無念流の極意。人生も同じじゃないですか?
努力したって方向が違えばうまくいかない。自然の摂理。
川だってそうでしょう。流れに逆らったらだめなんですよ。
何事も自然体。自然体で、自分を無くして向き合うことです。

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「真似がうまいということは大事なこと」

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これも剣道だけに限らない。

何事もまずは人の真似。

人の真似ができるということは、
よく観察しているということに通じる。

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下手なやつは真似も下手。

どう真似ていいか、
観察力がないのでわからないんだね。

真似がうまいということは、
上手な人の真似もうまいが、
下手な人の真似もできる。
つまり違いがわかっているということ。

「一流は自分を一流とは思っていない」

常に自分には何が足りないか、自分はどうして極められないのかと考えている。
それが一流になっていく人の共通点。
まだ足りない、何が足りないのかと練習するから結局人の何倍もの練習量になっていくし、基本中の基本が大事なんだと自分でわかっていくんですよ。

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「技前ができなければ、稽古で100点とっても試合では勝てない」

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面を打ってきた相手に返し胴。
こんな練習をいくらしても、その前が大事なんだよ。
この技が使えるのは、相手が面を打ってきたとき。
相手に面を打たせるようにしむけなければ、
その作業ができなければ、
こんな基本練習をいくらやっても勝てない。

返し胴が100点満点でも、
相手を面に出させることができなければだめなんだ。
これを技前という。
相手を引っ張りだす作業のことで、
相手が出てこなければ何度でもやり直す。
ここには何分かけてもいいんだよ。

この日は、波多野八段の弟さん、波多野一利さんが稽古にいらしてました。

一利さんは七段。吉祥女子高校の先生で、剣道部で指導もしています。
――波多野八段は病気も乗り越えて、すごいですよね。
「強いです。いや、もうまったくかなわない。すごいですね。」

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竹刀の先は時速100kmを超えるそうです。

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――そんな試合で
  どうして技が見えるのですか?

「(笑)
審判はうまい人でないとできないんです。
先を読んでいるから見えるんです。」

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波多野八段が学生さんを見る時、
厳しい中にもいつも優しさがこもっています。

だから伸び伸びと剣道を楽しみ、
強くなっていくのでしょうか。