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インタビュー

立川から発信するアーティスト Vol. 1デザイナー 寺西麻紀さん

Designer 寺西麻紀  (Teranishi Maki)

多摩美術大学 (彫刻科鉄専攻) 卒業。
2012年、自身のブランド「Luce macchia」を
立ち上げ、本格的な制作を始める。
rooms、nest+passegeなど、
様々な合同展示会に出展。
2015年 paris fashion week時に
paris1区にて展示会参加。

2016年 9月29日~10月2日
ジュエリー、アクセサリーの
「パリコレ」とも言われる展示会、
『プルミエールクラス』への出展が決定。
場所 :Paris, Jardin des Tuileries

新進のジュエリー作家として
注目を浴びている。

火の力によって水のように溶け、
様々な姿に変貌するガラス。
光の反射と屈折が奏でる
その姿に魅了され、世界にたった一つ、
輝くジュエリーへと昇華させる
デザイナー 寺西麻紀さん。
ブランド名「Luce macchia」
(ルーチェ マキア)は、
イタリア語で“光の染み”を表すとか。

百貨店への搬入を控え
製作に追われる、ある日の午後。
寺西さんのアトリエ(富士見町)で
お話を伺いました。

ガラスと人間の繊細さって似ている。

強そうでもろくて、もろそうで強い。
かといって、変に力をかけると
割れてしまうけれど
丁寧に扱えば、ずっと輝いててくれる。
ガラスのそういうところって、
人間に似てますね。
高校から美術科に進んで、
色々なマテリアルに触れてきましたが、
中でもガラスは、私にとって
とても魅力的な素材です。

◆使用する素材は、ボロシリケイトガラス。通常のガラスと比べ、透明度や硬度が高く、軽さがあるのが特徴だとか。

感情を呼び覚ますような
ガラスジュエリーに。

光や風景、現象をも映し出すガラス。
それは感情の発生源とも言えます。
ガラスという、ちょっと緊張感のある
素材を日常に取り入れることで、
おもしろい風景になるんじゃないかと。

かくいう私自身、臆病者なんですけどね。
だからこそ、初めてのことに
足を踏み入れてみたりもする。
それは体験が多いほど、
表現するチカラも増すと信じているから。

私のデザイン自体は、
“ミニマム”をイメージしています。
そこに込められた思いよりも、
ジュエリーをまとう方を浮き上がらせたい。
まとう方や、そのガラスジュエリーを
見た方の感情を呼び覚ませられるような
表現がしたいです。

◆2500℃のバーナーにガラス棒を当て、切ったり、曲げたりして作っていく。デザイン画などは特になく、いつもガラスと相談しながら。火で、自由に形が作られるところに惹かれる、という寺西さん。

人の体を、
キャンバスに見立てて描く。

作る工程においては、ガラスの状態にこちらが合わせて
動いていかないと出来ません。
ムリやり形を作ろうとしても、ガラスが嫌がって
いい形にはならないんです。
それだけにガラスの性質と私の出来る力でのモノ、
という思いがありますね。
それが面白い。

光を味方にする、ガラスのジュエリー。
ガラスがもつ透け感や抜け感といった性質などから、
意外性のある印象を与えることが出来ると
思っています。

小さい頃から、作ることで
生きていきたいと思っていた。

親が転勤族だったこともあり、
色々な土地を見てきました。
自分に合う都市があれば、
合わない都市もあって。
いつもどこか旅人のように、
外から見ている感じがありますね。
そこに住んでる人にとって
当たり前のことが、私にとっては違う。
その逆もしかりで。

そうした差異がおもしろいと思うんです。
差異があるからぶつかったり、
色んな感情が出てくることも
あるけれど、違うものを融合させるからこそ、
豊かな形になるんじゃないかな。
それが文化というか、人間の文明に
つながっていると思います。

そして、自分らしく心地よく
生きていくには自ら作り出したり、
見つけ出すことから。
人生は自分でデザイニングしようと、
10才くらいの時に思っていました。
それなら私が好きな美術の道に進みたいと
中学校3年生の時に、はっきり思ったのを覚えています。

最初は二足のわらじでも、
どこかで覚悟は必要。

ショーや展示会、自分らしく打ち出せるものがあれば
チャレンジしてもいいんじゃないかと思います。
でないと人の声どころか、自分の声すらも
聞こえなくなる可能性もありますし。

それこそ、人それぞれのとらえ方や
感じ方で、自分が思っていたこととの
違いがわかるとか。
それをどう編集するか、そこが作品を昇華させる
一番のタイミングだと思います。

そういう風に、瞬間、瞬間を
自分で作っていかないとたぶん何も変わらない。
こと、クリエイティブに関しては
実践していかなければ、
その作家としての動きは
明確でないかもしれない。

思った時がタイミング。
人に使われるよりは、
自分に使われた方がおもしろい。

出来る限り努力をしますし。
身体を休める努力も、遊ぶ努力も(笑)
結構、身体のいうことは
聞いてるかもしれないですね。

自営業なので、一人ですべてを
決断しなきゃいけない。
今は指摘やアドバイス、
そうした他の方の声なども以前に比べて、
素直に聞けるようになりました。
人からのアイデアなども試していくうちに、
別の道が広がったり。
自分一人で立ってるわけじゃない
というのが、どんどんわかってきている感じですね。
やはり人のご縁が、一番大事ですから。

◆金やプラチナを焼きつけたり、
ガラスを用いた様々な表現法に挑んでいる。

いつどういうことがあっても、
“自分はよくやった”と思って終わりたい。

何かを成し遂げたと思った瞬間、
それ以上の成し遂げたいことが現れる。
なんだかいつも、振り出しに戻った
気分になります。
“あ~、もっとやらなきゃ”と
がっかりな気持ちと、ワクワクな気持ち。
これからもその両方を抱えながら前進し、
いつか「よくやった!」と思えたら幸せです。
その時はもう、おばあちゃんに
なっていそうですけど。(笑)

※記事の内容は掲載時のものです

by T.I