商店街の名残りのような場所で、今なお対面販売のみでご商売をつづけている渡辺進生（わたなべ しんじ）さんは、知る人ぞ知る精肉店「ミート渡辺」の主。創業は今年（2024年）で53年目を迎えました。
立川市柏町のこの場所に大規模な集合住宅が建設されて、多くの方が暮らしはじめ、活気にあふれていた時代。この商店街には「ミート渡辺」のほか、八百屋さんや雑貨店、お寿司屋さんなどが軒を連ね、とても賑やかだったそうです。当時の渡辺さんは、お店を1日も休むことなく、連日深夜遅くまで仕込みをつづけ、寝る間も惜しんで仕事に打ち込んでこられました。
開店から半世紀以上も経てば、住民の暮らしも状況もさまざまに変化するのは必然。まさに時代の流れにはあらがえません。いつの間にか残っているお店はうちだけになっちゃったよ…。と、すこし寂しそうな表情でこれまでをふり返る渡辺さん。と・こ・ろ・が！ 50年以上の歳月が経とうと、周りのお店が閉店しても、「ミート渡辺」は今なお1日も休むことなく、あの頃となんら変わることなくご商売をつづけています。
来店するお客さんの8割が常連さんというのは、なんとなく察しがつきますが、お店周辺のお客さんだけでなく、立川市街から車でやってくる人。立川でも南の方からモノレールをつかって買いに来る人など、渡辺さんのお肉を求めて遠方からもやってくるお客さんには驚きです。
創業から一貫して行っていること、それは「徹底した筋切りと、骨と脂の処理」。さまざまなお肉の塊から、手作業で丹念に一つひとつを処理することで、お肉は柔らかく歯触りの良い食感と旨味が増すのだそうです。そしてさらに熟成させて、より良い品質に仕上げたものを販売します。
おぉ！○○さん
いらっしゃい！
今日は何するの？
何人で食べるの？
じゃあこのお肉で充分だよ！
これくらいで良いですか？
あまり焼き過ぎないでね。
すみません。いただきますね。
ありがとう。
いつ伺っても変わらぬ笑顔と謙虚な姿勢。
そして、捧げられた命に最大限の努力を施して、おいしく食べていただくこと。
「ミート渡辺」のお肉を食べて育った子どもたちが親となり、自分の子どもにも渡辺さんのお肉を食べさせたい！と願い訪れる。渡辺さんが半世紀以上もの間、変わらず行ってきたことが何だったのか…。この日ハッキリとわかりました。
「ミート渡辺」でお肉が買えるのは、あと何年くらいできるのだろうか…。
